《歩く船》から《歩く方舟》へ

《歩く船》から《歩く方舟》へ

1999-2001年にかけて山口啓介は休止していた銅版画制作を再開します。

その作品の中心となったのが自家製版画本『枯野と幼年期の終わり』、

その版画本に登場する奇妙な、足の生えた船、それが《歩く船》でした。

34_2000_10

                                     《歩く船》2000年

版画集『枯野と幼年期の終わり』と《歩く方舟》について

 古事記の中に「枯野(かれの/からの)」と名付けられた船が登場します。
大和の国で、朝日を受けたその影が淡路島にまでおよんだという楠の大樹を
倒して作られたこの船は、それは大きく、それは速く、人間のスケールをはる
かに超える船で、また、老朽化したその船を焼いて塩を焼き、その燃えさしで
つくった琴の音はさやさやとまるで海の音のようだったと記されています。
 一方、未来また現代の巨船。アーサー・C・クラークが代表作『幼年期の
終わり』で60年前に著し、今まさに現在になりつつある未来図に登場する
巨大な宇宙船の物語。この船の住人オーバーロードは、人類を真の危機から
遠ざけ、その種としての行く末を見守ります。
 1999年から2000年にかけて制作した版画集『枯野と幼年期の終わり』の
中で、山口啓介は二つの巨船を引き寄せて新しい巨船、《歩く船》の物語を
紡ぎだしました。
 そして2013年、人類にとって最大の危機とされた「核」の問題が身近なもの
となった今、山口の《歩く船》は自ら10本の脚で立ち上がり歩き出すのです。
未来にいのちをつなぐ《歩く方舟》となって。

 (hakobuneプトジェクト 2013 いわき市立美術館 パンフレット  ueda reiko)

Photo_2

歩く方舟 on いわき、玉響の休息 2013年

| | コメント (0) | トラックバック (0)

黒い泪   山口啓介

黒い泪、方舟光の樹、悪魔を喰らう、4 oil paintings

黒い泪 ―― /男がアワビ/女を握り込み、黒い汁が滴り落ちる……

戦争は大抵の場合、男たちが起こし、女たちは被災者になる。

今年、2012820日、シリア北部のアレッポで、1人の日本人女性が殺された。

彼女はジャーナリストで、戦争報道の仕事中に砲撃されたという。

放射線管理区域の標識は、三角形か、原子核からα線、β線、γ線が飛ぶ出す

三つ葉の扇のようなかたちになっている。セシウムやストロンチウムは目に見え

ないが、たぶん目に見えない程小さな三角形の集積で球形をつくっているのだろう。

その見えない三角形の集積は、海の底にも降る。そしてふたたび黒い汁が飛び散って、

黒い泪が流れる。

方舟光の樹――福島の穴だらけの4つの原子力発電所は、石棺で覆われるしかな

だろう。

西より、方舟が歩いていって、4つの原子炉に覆いかぶさる。そのようにしてつくられた

方舟/石棺は、はじめの原発の建屋外壁のように、空色と白でふたたびペイントされる。

はじめの建屋は、恐ろしげなものを見えないようにするために、空と雲に融け込ますよう、

恐怖を透明にするために。

次の石棺は、隠しようのなくなった恐怖を、空と雲の大気の力を借りて鎮めるために。

大気からとり出した光合成が、光の樹となって緑で荒地を覆い尽くす。

悪魔を喰らう――悪魔を喰えるのは緑とその存在だけだろう。それは悪魔にとりつき、

頭からすっぽりと喰ってしまう。あるいは頭だけ切り取って皿の上に載せて運んでくる。

 4 oil paintings――4つの絵画。明朗なペインティングの、シリアスで楽天的な気分が

4つの建屋に対峙する、そんな時がふたたびめぐってくるだろうか……


 20121019日

 山口啓介 

2012_533x800_2
黒い泪 アクリル、顔料、キャンバス 2012年 240x214cm

800x533_6

方舟光の樹1,2,3 水彩、色鉛筆、水性ボールペン 2012年 50.5x65.3cm (左3点)

悪魔を喰らう1,2 / 伊坂義夫とメフィストをめぐって   (右下2点)

水彩、鉛筆、紙+コピーコラージュ 2012年 54.5x39.7cm

2012_800x533_5

4oil paintings   (右側 壁)

800x533_7

アートプログラム青梅2012  青梅市立美術館  展示風景

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

《方舟光の樹》-山口啓介 

《自然と幻想の博物誌》展 (2012年7月14日-8月19日) 豊橋市美術博物館で

展示された《光の樹》。

Photo_3

 《光の樹》 2012 山口啓介

Photo_5

会場展示風景

Photo

ディテールです。水中花のようにも見えます・・・

Photo_7
山の稜線をかたどった曲線の連なり。

Photo_4
ライトアップ ナイトミュージアムにてライトアップされた光の樹

本展の会期中特別企画として2日間だけ開催されたナイトミュージアムでは、

子供たちが懐中電灯をもって展示会場の作品をみてまわったそうです。

Photo_8

《方舟光の樹1》 2012 山口啓介

また、新作のドローイング《方舟光の樹》シリーズは、これまでの《光の樹》に

新しい意味を付け加えつつ、いまも生成しつづけます。

Photo_9
山口啓介 ドローイング作品展示風景

《自然と幻想の博物誌》豊橋市美術博物館の展覧会カタログはこちらまで。http://www.toyohaku.gr.jp/bihaku/goods_and_publications/zuroku.html

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

《光の庭、三ッ山5つの空気柱》-山口啓介

大地の芸術際 2006年 《光の庭、三ツ山5つの空気柱》 

第3回 越後妻有アートトリエンナーレ、十日町の山里の小さな集落、三ッ山。

廃校になった小学校、三ツ山分校に展示された山口啓介の作品です。

74_3_6
体育室: 壁にかかっているのは昔から伝わるこの周辺の手書きの地図。

三ツ山分校に保管され、追加修正が加えられていた貴重なもの。

73_1_2006_11

中心の《光の樹》、周りを取り囲むのはライトアップされた《光森》

77_1_3
二階の教室: 《山の教室》 残されていたさまざまな教材をつかってのインスタレーション 

いまはもう校舎はありませんが、以下のサイトに写真と図面などアーカイヴされています。

 

空家プロジェクト-旧三ッ山分校 

http://park18.wakwak.com/~prospector2/works/AP03.htm

 

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

《光の樹》 - 山口啓介  

《光の樹》

2005年の夏、伊丹市立美術館で開催された《いのちをかんがえる 山口啓介と

中学生たち 粒子と稜線》展のために制作された《光の樹》 

65_2

光の樹/粒子と稜線 291x262x230cm  2005年

粒子と稜線-3  山口啓介 

 

微妙に振動している粒子。粒子が集まって固体をつくり、雨や大気をつくる。

光の粒子を集めることは、巨大なレンズや複雑な装置を使わなくても、

空の灰色で覆われた雲を透過し、海に降る雨の柱、一本の樹の木漏れ日

からも得ることができる。柿の木のある美術館の中庭から午後2時過ぎから

差し込む光が、柿の葉の隙間を透し、《光の樹》は、床にわずかな光の虹を

つくった。この一つひとつに樹脂を流し込み、植物を収めた七色の透明な箱を

積み上げ、ある山の断層の曲面をもつ三角柱のような「筒」は、上からみると

ハート(心臓)形の、見えない水脈を引く、浅い井戸でもある。

 

 それは連続する断層の無数の重なりからできている山の稜線から、一つの

断面を選び、この1コマの断面を底面にして立ち上げた光の筒で、透明な箱

のなかの、遠目には中空で静止したかのようにみえる植物の一片は、光を

透すと昆虫のようにもみえ、植物と動く昆虫が似ていることに改めて気づいた。

 

 この自然のつくりだす相似形は、はっきりした理由がわからないまま、いまも、

わたし自身を惹きつづけているけれど、もし動いていた生き物を同じように箱に

つめるとしたら、まったく違う感じを与えてしまうものになることが容易に想像が

できる。その場合には、露骨な強制とある種の残酷さからくる目論みをもって、

動いていたものの停止が、直に死を意味するが、わずかな運動で静止つづける

植物の表象するものとの差異を比べるとき、自分には、植物がいまそこにある、

静止しているもののもっている意味が、いっそう多様に開かれているようにみえる。

            (いのちを考える 山口啓介と中学生たち カタログより抜粋) 

66

上からみた《光の樹》

「いのちを考える 山口啓介と中学生たち」 伊丹市立美術館

 2005年8月3日(水)~8月28日(日)

http://www.artmuseum-itami.jp/2005_h17/05yamaguchi.html

また美術館に隣接する、旧岡田家住宅酒蔵では中学生たちと

つくった《酒蔵の光森》が展示されました。

69

ワークショップ「わたしの世界模型」

2005年 7月23-25日

講師:山口啓介

http://artmuseum-itami.jp/2005_h17/17w_inochi.html

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

*《光の樹》は、2012年7月14日-8月19日まで、

豊橋市美術博物館に出品しています。

《自然と幻想の博物誌》

http://www.toyohaku.gr.jp/bihaku/pdf/specimenart.pdf

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

こどもの方舟―いのちを考える Part2 いわき市立美術館 その2

カセットプラント ファクトリー こどもの方舟―いのちを考える Part2

                 《影絵劇場》

9_iwaki_ws_422


脚立の高さも調整し、かなり高くなってきました。

11_iwaki_ws_422

全体を写そうと後ろにまわってみると、逆光でまるで影絵のようです。 

12_iwaki_ws_422


10_iwaki_ws_422_2

完成までの《影絵劇場》     

13_iwaki_ws_422_6

14_iwaki_422_3

15_iwaki_422_6

16_iwaki_422

18_iwaki_422_5

最後の1つを貼り、完成!拍手!  

19_iwaki_422_3

20_iwaki_422

前日、学芸員の方からのメールで、完成したときのタイトルをたずねられました。 その末文には「いわきの桜は、今、満開です。」と記され・・・   

そして、このカセットプラントの、1日だけのタイトルが名づけられました。

          《こどもの方舟-いわきの桜満開のころ》  

                2012年4月1日ー22日        

21_iwaki_423_2

 

このカセットプラントの方舟は、次の展示先の豊橋市美術博物館へと船出します。 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

こどもの方舟―いのちをかんがえる Part2 いわき市立美術館




カセットプラント ファクトリー こどもの方舟―いのちを考える Part2

 

4月1日から22日まで、いわき市立美術館で開催された展覧会。

《みんなで元気になるアートの広場》では、期間中来場者の方に

カセットプラントを少しずつ作って積み重ねていってもらいました。 

そして最終日、山口啓介さんと一緒に、ワークショップ参加者の

みなさんでカセットプラントを完成させました!

4月22日、完成するまでの制作風景です。

2_iwaki_ws_422

レクチャー

3_iwaki_ws_422_7

美術館のスタッフ、ボランティアの方が、花をきれいに分類してくださいました。

4_iwaki_ws_422

「ひとりでできるよ!」

6_iwaki_ws_422


7_iwaki_ws_422

窓越しに教会が見えます 

8_iwaki_ws_422


つづく

| | コメント (0) | トラックバック (0)

世界希少・難治性疾患の日 2012 

世界希少・難治性疾患の日 2012(レア ディジーズ デイ)が、2月29日に

開催されました。日本では今年が3回目になります。カセットプラント ファクトリーは

第1回目からカセットプラントのワークショップを一緒に取り組んできました。

さて、当日朝、外を見たらなんと雪が!!積もっていました・・・

電車も遅れがちで、どうなることかとおもいましたが会場はそれほど

影響もなかったようで一安心。午後からは、雪もやみ立ち寄る人も増えてきました。

スタッフのみなさんも、もうすっかりカセットプラントへの誘導、説明も慣れた

感じで、和やかな雰囲気で参加者のみなさんにも楽しんでいただけたようです。

会場前の、サインパネルはポスター、チラシにも使われた山口啓介の絵画作品

「田園風景」のイメージで目を引くようこんなに大きく設置されました。

Photo_2

Photo_3
会場の様子

Photo_5

少しずつふえてゆきます

Photo_6

カセットプラントWSとメッセージボード

メッセージボードには、手形スタンプを押してメッセージを書きます

Photo_7

反対側には、和歌山から届いたオリジナルメッセージカード!

カセットプラント ファクトリーでお世話になっているなかむら屋さんの

協力で、今回「なかむら屋マイRDD」が実現しました。

「2012.pdf」をダウンロード


Photo_9

かなり上までできてきました

Photo_10

OO(おお)広場

Photo_11

花に囲まれ♪

Photo_12

18:00-19:00のメインイベント「患者さんの声」たくさんの人です

Photo_13

そして、ついに完成~!

Photo_14

みなさんありがとうございました♪



| | コメント (0) | トラックバック (0)

いわき市立美術館 「山口啓介 カセットプラント こどもの方舟-いのちをかんがえる」

【カセットプラント ファクトリー こどもの方舟-いのちをかんがえる】

2012年1月21、22日(土、日)に、いわき市立美術館で開催された

ワークショップの様子のレポートです。

両日とも10時からお昼をはさんで15時まで作業をおこないました。

去年の12月から美術館のスタッフのかたとボランティアのかたに

シリカゲルで乾燥させてもらった花を、カセットケースの中に入れて

いきます。

Img_2960_800x533_2
おもいおもいに好きな花を選んでカセットケースに詰めていきます

Img_2975_800x533

カセットケースに両面テープをつけます

Img_2945_800x533_7
下から順番に積み重ねてはっていきます

Img_3027_800x533
「よいっしょ!」4歳の女の子も夢中

Img_3015_533x800

「どこにはるときれいかな~」となりとのバランスを考えながら

Img_3058_800x533_2
いかがでしょう~

Img_3131_800x533_3

わたしのとっておきの1個、撮れるかな・・・

Img_3123_800x533

高いところは、脚立も使いました

Cp__

晴れた日に、陽射しが差し込むカセットプラント

たくさんのこどもたちと参加者のみなさんの笑顔がいっぱいの2日間でした!

またお会いできる日を楽しみに。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「痛々しい」と「愛おしい」

今月27日(日)まで開催されているアートプログラム青梅2011「山川の間で」。

青梅市立美術館に展示されている山口啓介の作品をご紹介します。

2011
青梅市立美術館展示風景 2011

今回の制作は、3月11日、12日の影響は否めないという中で、山口が描いた新作 「hiBakuSya」

Hibakusya
hiBakuSya キャンバス、アクリル 2011年 山口啓介
 

制作はいつも夜のほうが集中できるといい、10月制作も半ばにさしかかった頃、NHKラジオの深夜放送を聴きながら描いていると、たまたま流れてきたある話をとても印象深く感じたと次のように話します。

「あのモノトーンの作品を描いているとき、ラジオでザ・フォーク・クルセダーズのメンバーだったという精神科医の北山修さんが、最近、絵画にとくに何か自分が求めているものがある…
とくに震災後、フリーダ・カーロの絵の動物も植物も人間も同等に扱っている眼差しが今とても必要だと思う、と話されている声が流れてきた。
そして「痛々しい」という日本語が変化して「愛おしい」になったというようですよ、といい、フリーダの自画像は自虐的なものでなく、そういう自分を正面から見つめている眼差しの強さがある、というような趣旨の話だった。
偶然にも僕はその時、床の上に広げたキャンバスの上に乗って、痛々しいこどもを描きながら、同じような気分になっていた。」

山口がもとにした痛々しいこどもの写真は、以前、「劣化ウランのこどもたち」というタイトルで、銅版画や木版画に描いたときに見ていたインターネットからのものでした。
目を背けたくなるほど悲惨な、傷ついたこどもたちの姿を山口は直視し、愛おしく感じ描いていたのだ・・・とあらためて知りました。

*この展示は 2011年11月27日(日)まで、青梅市立美術館にて

第9回アートプログラム青梅「山川の間で」2011 の詳細はこちらをご覧ください

http://www.art-program-ome.com/index.html

Photo

星座シリーズ 2011 山口啓介

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«《幻夢の背泳》 谷川雁 著