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2013年1月

黒い泪   山口啓介

黒い泪、方舟光の樹、悪魔を喰らう、4 oil paintings

黒い泪 ―― /男がアワビ/女を握り込み、黒い汁が滴り落ちる……

戦争は大抵の場合、男たちが起こし、女たちは被災者になる。

今年、2012820日、シリア北部のアレッポで、1人の日本人女性が殺された。

彼女はジャーナリストで、戦争報道の仕事中に砲撃されたという。

放射線管理区域の標識は、三角形か、原子核からα線、β線、γ線が飛ぶ出す

三つ葉の扇のようなかたちになっている。セシウムやストロンチウムは目に見え

ないが、たぶん目に見えない程小さな三角形の集積で球形をつくっているのだろう。

その見えない三角形の集積は、海の底にも降る。そしてふたたび黒い汁が飛び散って、

黒い泪が流れる。

方舟光の樹――福島の穴だらけの4つの原子力発電所は、石棺で覆われるしかな

だろう。

西より、方舟が歩いていって、4つの原子炉に覆いかぶさる。そのようにしてつくられた

方舟/石棺は、はじめの原発の建屋外壁のように、空色と白でふたたびペイントされる。

はじめの建屋は、恐ろしげなものを見えないようにするために、空と雲に融け込ますよう、

恐怖を透明にするために。

次の石棺は、隠しようのなくなった恐怖を、空と雲の大気の力を借りて鎮めるために。

大気からとり出した光合成が、光の樹となって緑で荒地を覆い尽くす。

悪魔を喰らう――悪魔を喰えるのは緑とその存在だけだろう。それは悪魔にとりつき、

頭からすっぽりと喰ってしまう。あるいは頭だけ切り取って皿の上に載せて運んでくる。

 4 oil paintings――4つの絵画。明朗なペインティングの、シリアスで楽天的な気分が

4つの建屋に対峙する、そんな時がふたたびめぐってくるだろうか……


 20121019日

 山口啓介 

2012_533x800_2
黒い泪 アクリル、顔料、キャンバス 2012年 240x214cm

800x533_6

方舟光の樹1,2,3 水彩、色鉛筆、水性ボールペン 2012年 50.5x65.3cm (左3点)

悪魔を喰らう1,2 / 伊坂義夫とメフィストをめぐって   (右下2点)

水彩、鉛筆、紙+コピーコラージュ 2012年 54.5x39.7cm

2012_800x533_5

4oil paintings   (右側 壁)

800x533_7

アートプログラム青梅2012  青梅市立美術館  展示風景

 

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