作品

枯野と幼年期の終わり  山口啓介

1999年から2000年にかけて、山口がはじめてエッチングによる

自家製版画本「枯野と幼年期の終わり」を手掛けました。

当時、世間ではあれほど騒がれた世紀末、ミレニアムも大きな変化

もなく過ぎ去り、2001年1月にこの展覧会は開催されました。

そのとき、このタイトルの「枯野と幼年期の終わり」とはなんだろう?

その後の世界はどんなものだろう、と思ったものでした。

そして、数年たったあるときハッとした予感とともに思い至りました。

幼年期の終わりは「幼年期」がなければ終えることもない・・・

今わたしたちは幼年期に生きているのだと。

世紀末におこるはずだったカタストロフィーは、2011年に繰り上

がったように目の前に現実のものとなり、そして、わたしたちの

「幼年期」も、そろそろ終わりに近づいているようです。

下記は、2001年の個展での発表に際し、この版画集の前文と

して書かれたものです。

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枯野と幼年期の終わり   山口啓介

2001年が明けた。手塚治虫や真鍋博の描いた未来都市はまだ到来せず、

キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』のように、星間旅行が日常に

なることもなかった。しかし、映画の原作を書いたアーサー・C・クラークや、

2003年にアトム誕生を設定した手塚が、夢のような未来社会を21世紀

はじめに想定していたとしても不思議ではない。彼らの未来図が描かれた

20世紀の中頃、人間は早々と月にまで行っていたのだから。

むしろ当時の感覚からすれば、その後、数十年間の大きなハードウエアの

停滞は明らかだ。もっとも、より小さな部分や目に見えない内部で、ソフトウ

エアは確実に進行しているのも事実である。それは目にみえないディスクの

内へ、あるいは人間の身体の奥深い内部へ入っていく。ところが20世紀の

最後の年が終わる頃になって、つじつまを合わせるように、人間のように

二足歩行するロボットや、本格的宇宙ステーションの建設開始が相継いで

発表された。人工知能や宇宙の旅によって、彼らの描いた世界のように、

やがてヒトはその“外部”を得るのだろうか? ―クラークは一方でまた

もう1つの未来図として、宇宙の旅に出る前にそれがやって来るケース

“Childhood's End-幼年期の終わり”を描いている。

かつて4つの黒船が浦賀に来航したときのように、アーサー・C・クラークは

“Childhood's End”で“船”を世界中の都市の上空に置いた。黒船によって

藩政の境界線が崩れ、1つの列島を人々が発見したように、ある日、突然

飛来した“船”によって国境は意味を失う。世界は1つの球体になる。

 

空の上帝(オーバーロード)たちが、守り役として人類を飼育する話を書いた

作者は、彼らの外見を“悪魔”に似せて描いた。

 

ヒトには“悪魔”が必要かもしれない。

どの種にも攻撃性が内在しているという。ヒトの闘争は絶えることがない。

闘争をなくすにはこのような悪魔が必要である。

 

悪魔はヒトの共通の敵あるいは圧倒的な外部だ。

この敵あるいは外部をヒトは見失い、1つの民族・階級・宗教、あるいは、

文化、政治、生活の敵を見つけることに忙しい。

 

見ることのできるヒトの共通の敵は、1つは核であり、1つは環境破壊であり、

そしてもう1つは恐らく病気であるが、外部はいつも曖昧だ。

 

ヒトの多忙さが終わるとき、幼年期の終わりがやってくる。

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枯野と幼年期の終わり Kareno/Childhood's End    Yamaguchi Keisuke 

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歩く船 Walking Ship  Yamaguchi Keisuke
 

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2/28 レアディジーズデイ 2011 の「絵」

 

今月、2月28日(月)は、世界希少・難治性疾患の日です。

2008年にスウェーデンで始まった活動で、世界30カ国が参加、

日本は、昨年2010年から参加し、まだ始まったばかりの活動です。

2009年、主催者からの呼びかけによって、カセットプラントファクトリーは、

この活動に賛同し、去年、日本ではじめての「レアディジーズデイ 2010」に、

カセットプラントの展示と、ワークショップをイベントの一環として行いました。

主催者の呼びかけには、世界中に希少・難治性疾患に苦しむ人がいるにも

かかわらず、その実態はよく知られていないとあります。

「まず、知ってもらいたい」 去年のイベントに参加して、患者さんやご家族、

主催者の思いは、私にも少なからず伝わってきました。

今年もその思いをつなげていこうと、去年にひきつづき、カセットプラントの展示と、

ワークショップを、丸の内オアゾの(おお広場)で開催します。

さらに今回は、ポスターやチラシなどの「原画」を、山口啓介が担当しました。

それがこちらです。↓

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山口啓介が、レアディジーズデイのために描いた「絵」がどんな絵なのか

分解してディテールを見てみたいと思います。

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                                                           絵 山口啓介 (部分、以下同じ)

上のほうの、地球のような、世界地図のような部分です。

これは、2009年に「アノマリー」(予測できない現象)と、

名づけた最近の作品によく見られる形状と共通しています。

さらに、アップにします。

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左側には、どこかユートピア的な、牧歌的な

家並みがならぶ風景が見られます。

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一方ではそのすぐ右手に、奈落のような、

ねじれのような、図が描かれています。

「絵」の全体を眺めてみます。

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                                                              絵 山口啓介

ここで、ある視点を想像してみます。

・・・山のある風景に立っている、私。

私が立っている地球から、空に浮かんでいるもうひとつの地球、

あるいはもうひとつの世界を眺める視点。

「いま私たちが暮らしている地球・世界を外から見る、もう一つの視点」

これが、アーティストの視点なのでしょうか?

この「絵」をとおして、「世界希少・難治性疾患」について

さまざまさ思いを巡ぐらせ、言葉がかわされる。

そのような「絵」による共鳴が生まれるといいなとおもいます。

●RDD2011のご案内ホームページ
 http://rarediseaseday.jp/guidance/index.html

sakko

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